舞洲プロジェクト 特別企画 3クラブ社長鼎談(前編)

 

新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響で、さまざまなスポーツが活動制限や行動自粛を余儀なくされる状況が続きました。今回は大阪・舞洲に拠点を持つ、3つのプロスポーツチームの社長に各スポーツへの影響、今後への課題などをお聞きしました。この模様を3回に分けてお届けします。

 

第1回目のテーマは「コロナウイルスが変えたもの」です。

 

(6月3日オンラインにて収録)

 


 

安井 直樹 ヒューマンプランニング株式会社(大阪エヴェッサ)代表取締役

湊 通夫  オリックス野球クラブ株式会社(オリックス・バファローズ)代表取締役社長

森島 寛晃 株式会社セレッソ大阪(セレッソ大阪)代表取締役社長

 


 

 

Theme1:コロナウイルスが変えたもの

リーグの中断・開幕延期について

 

 

--本日はお忙しい中、ありがとうございます。COVID-19:新型コロナウイルス感染症(以下コロナウイルス)の流行に伴い、我々の生活は大きな変化を余儀なくされました。その中でスポーツも大きな影響を受けました。ようやくプロ野球の開幕、そしてJリーグの再開も決定しましたが、今日はコロナウイルスの流行によって、スポーツ界に生じた変化、そしてこれからのスポーツ界のあり方などをお話ししていただきたいと思います。

まずは、リーグ戦の打ち切りを経験された大阪エヴェッサの安井社長におうかがいします。このような事態の深刻さについて、当初から予想できていましたか?

 

安井 3月の頭くらいまでは、社会的にもそれほど深刻な状況ではなかったように感じています。今後、何らかの措置は取られるだろうとは思っていましたが、リーグ戦の中断というところまでは想像していませんでした。3月初頭の時点では、ここまで大変な事態になるとは思っていなかったというのが正直なところです。

 

--Jリーグは、リーグ戦1試合とカップ戦1試合を終えたところで中断に突入しましたが、森島社長は中断がここまで長引くと思っていましたか?

 

森島 リーグ戦の開幕戦(2/22)を終えた3日後(2/25)の理事会で中断が決定しました。私もその時点では、この先どうなっていくかという実感はありませんでしたが、その後何度もJリーグの理事会が緊急招集され、その度ごとに先が見えない不安が高まっていきました。

 

--今回の事態には、Jリーグと合同で対処された日本プロ野球(以下NPB)ですが、オープン戦の途中でスケジュールが中断されました。湊社長は当初、いつ頃に終息するとお考えでしたか?

 

湊 プロ野球は2月末までキャンプがありまして、その頃まではキャンプ地である宮崎や沖縄は、都市部でないということもあるのでしょうが、通常通りの日常生活を送っていたように思います。その頃はコロナウイルスに関するニュースも、対岸のニュースのような感覚は、多少なりともあったと思います。その後3月にオープン戦が始まり、それと同時期にJリーグとNPBで専門家を招き、どのように試合を運営していくべきかという話が始まりました。その頃から罹患者が増え始め、事態の重さに気付き始めました。その中で、どこで開幕できるかということを模索していました。ですからいつ終息するとかいうことを考えられる状況ではなく、事態が進行する速さに飲み込まれながらここまで来てしまったというのが正直な印象です。Jリーグも同じだと思いますが、本当はお客様に見ていただきたいところですが、そこは諦めて、無観客でも試合をやっていこうというのが、今の状況です。

 

 

 

 

 

無観客試合がもたらす影響について

 

 

--5月下旬にJリーグとNPBは、リーグ再開および開幕を発表しました。それは湊社長も言及されたように、どちらも無観客での再開ということになっています。先に無観客での試合を経験されているBリーグの安井社長にお尋ねします。無観客になることで、試合の雰囲気というものはどう変わりましたか?

 

安井 私もその場にいましたが、特殊な雰囲気ではあります。実際にプレーしている選手がどう感じたかは解りませんが、周りから見ている限りでは、気合が入り難い雰囲気であるようには感じました。

 

--これから無観客での公式戦に臨む立場として、湊社長と森島社長にお尋ねします。今の安井社長の発言を聞いて、これからどのようにして選手のモチベーションを上げていこうと考えていますか?

 

森島 サッカーでも、無観客ということはなかなかありませんから、殆どの選手が経験はないと思います。実際にスタジアムでサポーターの声援を聞くことで、選手のモチベーションが上がっていくというのは事実ですので、選手たちにとって試合に向けての準備が難しくなることは事実だと思います。

それでも選手はピッチに出て、いざ勝負という段になれば気持ちを切り替えて、勝利に向けて最高のパフォーマンスを見せてくれると思いますので、まずはサッカーができる喜びというものを選手には噛みしめてもらい、それをピッチ上で表現してほしいと思います。

 

湊 無観客ということでいうと、プロ野球は今やっている練習試合もそうですが、中断前のオープン戦から無観客になっていましたので、選手たちは無観客試合というものの雰囲気はある程度つかんでいるのだろうと思います。とはいえ、これはどの競技でも一緒だと思いますが、応援してくださるファンの方の声援というものは選手にとって大きな力になりますので、その声をどのように届くようにするかというのが、これからの課題だと思っています。

 

--オリックス・バファローズは現在開催中の練習試合から、手作りでスタンドに「STRONG OSAKA」というメッセージを掲出していますが、やはり選手たちに何らかのメッセージを届けたいという思いだったのですか?

 

湊 あれは即席でやったものでしたが、如何にしてファンの方の気持ちを選手に伝えるかということが大事になってきているのだと思います。ですからスタジアムのビジョンなどを有効に使い、そうしたメッセージを選手たちに届けていきたいと思っています。

 

--森島社長は、現役時代に無観客試合を経験されたことはありますか?

 

森島 公式戦ということでいえば、経験したことがありません。先ほど湊社長も言われましたが、サポーターの方の声援が選手の気持ちの部分を上げてくれて、それで試合にうまく入っていけるということがあります。しかし我々はまだ練習を再開したばかりで、無観客でのトレーニングマッチもやっていませんので、実際にやってみないと解らないというのが、選手も含めて正直な気持ちだと思います。

 

--大阪エヴェッサは無観客試合は何試合やりましたか?

 

安井 ホーム(おおきにアリーナ舞洲)で2試合です。

 

--そこで選手たちのモチベーションを上げる工夫は何かされましたか?

 

安井 あの時は急遽という形で無観客になりましたので、準備期間も十分にはありませんでした。当然、そうした想定がありませんでしたからノウハウもあるわけではなく、とにかく試合をするということしかできていなかったというのが、現状です。我々Bリーグの次シーズンは秋に開幕されるのですが、今回NPBさんとJリーグさんが無観客での公式戦に臨まれるということなので、逆にそこで勉強させていただくという気持ちもあります。

 

--NPBは6月19日、JリーグはJ1が7月4日で、開幕、あるいは再開が決定していますが、そこまでに状況が変化するということは想定されているのでしょうか?

 

湊 社会情勢の変化は、色々なパターンを考えておくしかないというのが正直なところです。こればかりは受け身にならざるを得ません。自分たちでどうにかできる話ではありません。ですからあらゆるパターンを想定し、その準備をしておくということです。選手たちに対しては、予防措置を講じながら、試合に集中してもらえる環境を作っていくということだと思います。

 

森島 今できる最大限の準備というのが大事なのだと思います。当面は無観客ですが、いずれサポーターの皆さんをスタジアムにお迎えするとき、選手を含めた全ての人たちに対して、安全な環境を如何にして提供するか、大阪市などの自治体とも連携して、周りの声に耳を傾けながら進めていくしかないと思います。

 

中編「Withコロナ、Afterコロナ のスポーツ観戦のかたち」に続く

 

 


 

安井 直樹(やすい・なおき)

1984年生まれ、大阪府出身。大阪エヴェッサ代表取締役。大阪エヴェッサのグループ会社でもあるヒューマンリソシア株式会社へ入社。2年後に大阪エヴェッサの運営会社であるヒューマンスポーツエンタテイメント株式会社(後のヒューマンプランニング株式会社)へ入社し、スポンサー営業を中心に経験を積んでチーフマネージャーへ。2016年6月末より現職。自身も小学校時代からバスケ一筋で、高校時代には全国大会出場経験を持っている。

 


 

湊 通夫(みなと・みちお)

1962年10月20日生まれ、大阪府出身。早稲田大学出身。オリックス野球クラブ株式会社代表取締役社長オーナー代行。1987年オリエント・リース株式会社(現オリックス株式会社)入社。主にファイナンスやリースなどの金融業務に携わり、2011年にオリックス野球クラブ株式会社へ。事業本部長時代にはファンを拡大するために、ファンクラブ運用システムの大幅変更や、チアに変わる球界初のダンス&ヴォーカルユニットBsGirlsを誕生させるなど様々な改革を断行。また、球団拠点の舞洲移転に際しては先頭に立ってこれを推進した。2018年に代表取締役社長に就任。

 


 

森島 寛晃(もりしま・ひろあき)

1972年4月30日生まれ。広島県出身。セレッソ大阪では1991年から2008年まで活躍し、J1通算318試合出場94得点。日本一腰の低いJリーガーとして愛され、ミスターセレッソとしてチームを17年間牽引した。日本代表としても国際Aマッチ65試合出場12得点と活躍。2002年W杯のチュニジア戦でも1ゴールを挙げる。引退後はNHKなどでサッカー解説を務める傍ら、クラブアンバサダー、強化部担当として活躍。現在はセレッソ大阪の代表取締役社長を務める。

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