第9回大阪マラソンボランティアに向けて~大学コンソーシアム×舞洲プロジェクト
2019年11月16日、特定非営利活動法人 大学コンソーシアム大阪による「スポーツボランティア論(スポーツ健康実習1)」の講義が行われました。この授業は、大学コンソーシアムの大学間連携事業として行われたもので、「単位互換に関する包括協定」を締結している36大学の学生が、他大学の科目を履修した場合、その学生の卒業単位として認定可能な制度を利用したものです。
今回、講義を担当している大学は大阪経済大学。会場となったキャンパスポート大阪(大阪市北区)に50名を超える様々な大学の学生を集めて、第2回目の講義が行われました。その模様をお届けします。
今回の講義は12月1日(日)に開催される「第9回大阪マラソン」直前の講義ということもあり、その実務的な説明を含む、より実務的な内容となっていました。
最初に登壇した大阪市経済戦略局スポーツ部スポーツ課でスポーツ事業担当課長代理の榎木谷達人氏からは、今回のコースについての説明がなされた。それに拠れば今回の大阪マラソンはコースを変更し、セントラルフィニッシュが導入された。
この市中中心部でフィニッシュを迎える「セントラルフィニッシュ」は、メジャーマラソンでは軒並み導入されている。日本国内では東京マラソンがそれを導入し、メジャーマラソンに数えられている。国内マラソンとしては2番目の規模を誇る大阪マラソンも、それを導入することで、6メジャーと呼ばれるメジャーマラソンに肩を並べるタイミングが来たと判断されたものだ。
一見すると、コースを変更しただけのように思われるが、この講義を担当している相原正道大阪経済大学教授によれば、これは相当な難事業であるという。
「マラソンの花形でもあるフィニッシュに場所には、3万人を超えるランナーだけではなく、その家族や友人など大勢の人が詰め掛けます。その方たちの導線を確保しつつも、交通手段が確保できる場所をゴールに定める。これは結構大変な作業です。加えて交通規制を最低限度に抑えるためのルート作りと時間管理も必要になります。そうした作業を経て毛ty呈されたのが今回のコースであり、メジャー大会に決して引けを取ることのない素晴らしいコースが誕生したと思います」
さらに相原教授に拠れば今回のコース変更によって、アップダウンが少ない平坦なスピードコースになったという。これはメジャー大会に仲間入りする上で、ひとつの大きな武器となるという。
説明の最後に榎木谷氏は「この大会を成功させるかどうかは、大げさでなくボランティアスタッフの働きにかかっています。楽しみながら、真剣に取り組んでください」と学生に語りかけた。
この日は大会直前の講義ということもあり、大阪マラソン組織委員会事務局で事業運営部長を務める川越啓充氏も、ゲストスピーカーとして登壇した。
川越氏は「今回のマラソン大会には13万3千人が応募、そこで当選した3万3千人が走ります。沿道には130万人の人手を予想しています。これを支えるのが、皆さんを含めた1万人のボランティアスタッフです」と大会の規模を数字で説明した。
今回、この講義を受講している学生が担当するのは、2箇所の給水所と決まっていた。
川越氏は「給水所は、数あるボランティアが担当するの中で『花形』ともいえる場所です。目の前を通り過ぎるトップランナーのスピードを間近に見ることもできますので、皆さんにとっても、興味深い場所だと思います」と、その特徴を説明した上で「個人的には車椅子ランナーのスピードを、ぜひとも注目してほしい」と語った。普段、目にすることの少ない競技用車椅子のスピードは想像を遥かに上回っており、選手が『超人』であることを体感できるという。
その上で「皆さんには、何が目の前で行われているのかを、しっかりと見届けてほしいと思います。こうした経験は、皆さんがやがて社会人となる際には、必ず役立つと思います」と学生に、ボランティアスタッフとしての心構えを伝えた。
その後は参加する学生を4つのグループに分けての、グループセッションが行われた。そこでは榎木谷氏より課題が与えられた。それはグループ内で自己紹介をした上で、グループごとのスローガン及び、給水所でランナーを激励する掛け声の決定だった。様々な大学の学生が集っているため、最初こそ戸惑っている様子も見られたが、それぞれが所属大学などを話す中で、議論は活発化していった。
こうして決定された各班のスローガンと掛け声は以下の通りだった。
1班:スローガン「ケガをせず、全力で楽しみましょう!」、掛け声「走れ~走れ~、ファイト!」
2班:スローガン「笑顔で応援しましょう!」、掛け声「ファイト!」
3班:スローガン「水を多く渡します」、掛け声「がんばれ、ファイト、ええ感じ!」
4班:スローガン「一致団結」、掛け声「ファイト!」
一見シンプルではあるが、学生たちが今回のボランティアの趣旨を理解した上で考えられたものだ。この講義を受講している近畿大学ウエイトリフィティング部の学生も「こうしたシンプルな応援は、実際に競技している中で力になります」と、肯定する発言で会場を沸かせていた。
第9回大阪マラソン 当日
休憩を挟んで、講義は実際のスポーツビジネスの現場の話へと移行した。
今回は舞洲プロジェクトに携わっている3クラブ(大阪エヴェッサ、オリックス・バファローズ、セレッソ大阪)から、それぞれゲストスピーカーが登壇した。
最初に登場したのはオリックス・バファローズの小浜裕一氏。
小浜氏はオリックス・バファローズのファーム公式戦が行われるオセアンBSスタジアム、大阪シティ信金スタジアムについて紹介。その中で球団職員がゲーム開催に際して、どのような工夫を凝らし、観客に快適な環境を提供しようとしているかということを、実際のスタジアムの写真とともに紹介した。
受講した学生の中で、京セラドームでのオリックス・バファローズの公式戦を観戦した経験のある学生は相当数いたが、普段目にすることの少ないファーム公式戦についての知識は乏しく、小浜氏の話には新鮮な驚きがあったようだ。
続いて登壇したのは、大阪エヴェッサの城秀樹氏。
城氏はBリーグの現状から、その中で大阪エヴェッサがどのようなポジションにいるかを説明することから話を始めた。プロ野球やJリーグと比較したとき、後発組織であるBリーグの知名度は低いというのが、一般的な理解ではあるが、会場内の学生に限って言うと、大阪エヴェッサの試合観戦経験を持つ学生は多かったというのが正直な印象だ。若年層にファンが多いバスケットボールというイメージが正しいことを裏付けた格好となった。その上で城氏は大阪エヴェッサが観客動員のために行っている工夫や大学生を対象にインターンシップの受け入れを行っていることなどを説明した。その上で、スポーツビジネスに従事する上で必要な心構えや姿勢についても話があった。スポーツビジネスに興味のある学生が多く受講していることもあり、大阪エヴェッサのこうした取り組みに興味を抱いた学生が多かったような印象を受けた。最後に城氏から受講した学生全員に、大阪エヴェッサの公式戦チケットがプレゼントされるというサプライズもあり、盛り上がりのうちに城氏の講義は終了した。
最後に登壇したのはセレッソ大阪の長谷川顕氏。
長谷川氏も最初はセレッソ大阪のプロフィールから話を始めた。そしてエンブレムに込められた思いや、これまでの歩みなどを説明した。その上で話は、クラブの経営についてに移行していった。Jリーグクラブの経営規模がこの15年間でどのように拡大してきたかということを、資料とともに説明したのだが、学生たちにとっては初めて聞く話が多かったようで、Jリーグクラブの売上拡大のスピードは、驚きをもって受け止められていた。続けて長谷川氏は、セレッソ大阪が取り組むホームタウン活動を説明した。地域密着はJリーグ共通の理念ではあるが、その具体策となると、意外に知られていないことも多い。セレッソ大阪がランニングクラブを所有しており、生涯スポーツの促進を図っている話やスタジアムを使用しての読書会などの具体例には、学生たちも興味を示していた。
今回の講義も4時間以上に及ぶ長いものではあったが、内容が盛りだくさんであったこともあり、最後まで集中力を切らさずに受講する学生の姿が目立った講義となった。