スポーツボランティア論の講義を学生50名超が受講

 9月21日、特定非営利活動法人 大学コンソーシアム大阪による「スポーツボランティア論(スポーツ健康実習1)」の講義が行われました。この授業は、大学コンソーシアムの大学間連携事業として行われたもので、「単位互換に関する包括協定」を締結している36大学の学生が、他大学の科目を履修した場合、その学生の卒業単位として認定可能な制度を利用したものです。

 

 今回、講義を担当した大学は大阪経済大学。会場となったキャンパスポート大阪(大阪市北区)に50名を超える様々な大学の学生を集めて、第1回目の講義が行われました。その模様をお届けします。

 


 

 今回の講義をメインで担当するのは、大阪経済大学の相原正道教授(人間科学部)。スポーツ・マネジメントやスポーツ都市政策や 国際スポーツ・マーケティングといった分野の研究における第一人者である相原教授が今回のテーマに選んだのは「スポーツボランティア」。ボランティアという言葉のもつ意味から、その為すべき役割にいたるまでを、講義とフィールドワークを通じて、学生たちに伝えていくという内容。全5回の講義の中で、フィールドワークの場とし、12月1日(日)に開催される「大阪マラソン」ボランティア参加が決定している。

 

 

 第1回目の講義となったこの日、最初に講義を行ったのは大阪市経済戦略局スポーツ部スポーツ課でスポーツ事業担当課長代理の榎木谷達人氏。因みに同課は舞洲プロジェクトの担当部署でもあり、榎木谷氏は、舞洲プロジェクトの立ち上げにも深くかかわってきた。

榎木谷氏の講義は「大阪市スポーツ振興計画と舞洲プロジェクト~スポーツボランティア 大阪マラソンについて」というもの。

 

 最初に紹介されたのは、2017年3月に策定された「スポーツ振興計画について」。そこには「スポーツが心の豊かさを稼ぐまち大阪」という目標の下、骨子として、3つの方針が示されている。それは「スポーツによる健康増進~身体活動量を稼ぐ」「スポーツによる都市魅力の向上~スポーツ参画人口を稼ぐ」「スポーツによる地域・経済活性化~ソーシャル・キャピタルを稼ぐ。スポーツ産業で稼ぐ」というもの。この具体的な目標値としては、スポーツ実施率65%という数値が設定されている。これは成人が週1回以上スポーツを楽しむ率だ。

 この中で特徴的なのは「稼ぐ」という言葉が頻出する点だ。そこには「稼ぐ」という言葉本来の意味が関係している。

 

 


「稼ぐ」とは、「暮らしのために、精を出して働く(動く)」ということを意味します。
「稼(ぐ)」という字は、「禾(いね)」と「家(カ)」からなり、稲が大きく実って育つという意味を表す形声文字です。
そして、「稼」は、「穀物を植えること。農業。耕作。また、植えつけた穀草」のほか、「暮らしのために、精を出して働くこと」を表します。

(参照)角川新字源、日本国語大辞典より


 

これを踏まえると、「スポーツが心の豊かさを稼ぐまち大阪」というスローガンの意味も、より解るというものだろう。

 

 続けて、個々の方針についての説明が行われた。全ての方針の根底にあるのは、スポーツ参画人口を拡大し、健康寿命を延伸しようというもの。スポーツ産業の成長が確実視される中、スポーツ人口を増やすことで、大阪の更なる活性化を図ろうという意図がそこにはある。ここで注目すべきは、2019年から続く「ゴールデン・スポーツイヤーズ」への取り組みだ。「ゴールデン・スポーツイヤーズ」とは、現在開催中のラグビーワールドカップ、来年の東京オリンピック・パラリンピック、そして再来年に開催される「ワールドマスターズゲームズ2021関西」というビッグイベントが連続して行われる3年間を指している。スポーツへの関心が高まる期間でもあり、中でもその掉尾を飾る「ワールドマスターズゲームズ2021関西」が、関西地区を舞台に行われるだけに、これをきっかけにスポーツ人口を増加させ、さらにはスポーツを通じた国際交流や人材育成・発掘を進めていきたいという行政の意思が感じられるものだった。

 

 続けて語られたのは、スポーツ産業の成長促進事業。この分野に対してはしっかりとした予算組みが行われており、大阪市の本気度が感じられた。これはソフト、ハードの両面にわたるものであり、その中には舞洲プロジェクトのメンバーでもあるセレッソ大阪のホームスタジアム改修計画や同じく舞洲プロジェクトのメンバーである大阪エヴェッサのホームアリーナであるおおきにアリーナ舞洲(舞洲アリーナ)の施設運営なども含まれている。

 

 

 続いてスポーツ振興事業の象徴的なプロジェクトとして、舞洲プロジェクトの説明に移った。ここでは舞洲の立地条件なども併せての説明が行われ、スポーツ振興事業がいかに幅広いものかということを学生たちに印象付けた。そして舞洲プロジェクトが取り組む5つの事業について、具体的な事例を挙げながらの説明が為され、学生たちは「オリックス・バファローズ」や「セレッソ大阪」、「大阪エヴェッサ」という馴染みのある名前が登場するため、興味深く聴講している様子が印象的だった。

 

 

 

 

 最後に説明されたのが、大阪市スポーツボランティアについてだった。これは大阪市が主催・共催するスポーツイベントや競技大会にボランティアとして参加する制度であり、大阪市在住や在勤を問わず、中学生以上ならば誰でも参加できるものだ。参加者には大阪市からボランティア募集情報が随時送付され、希望のイベントに登録できるのだが、その登録状況はまだ多いとはいえない。2018年時点で総数305名に留まっている。中でも35歳以下の登録者が少ないのだが、今回の受講者は、前記したように大阪マラソンにおけるボランティア活動が講義に組み込まれているため、全員がこのボランティア登録を行った。彼らの活動を契機に、若年層にこの制度が広まることを期待したい。

 

 

 休憩を挟んで相原教授による講義が行われた。電通でのサラリーマン経験も持つ相原教授は、サラリーマン生活の傍ら、筑波大学大学院で学び研究者の道に入った。これまで東京ヤクルトスワローズでの球団運営や、東京五輪招致委員会での活動など、様々な経験を持っており、そうした実体験を基にした講義だったため、学生たちの興味を惹いていた。

 講義の中で相原教授は最初に、ボランティアの意義について説明した。その中で契機となった事件として1995年に発生した阪神・淡路大震災を挙げた。このとき100万人のボランティアが、震災復興に力を発揮したのが、日本における「ボランティア元年」であると位置づけた。その上で、ボランティアを考える上で重要な要素は「意思」であると強調した。そこで東京ボランティア・市民活動センターがホームページ上で挙げているボランティアの4つの原則が紹介された。それは1、自分からすすんで行動する(主体性)2、ともに支え合い、学び合う(社会性・連帯性)3、見返りを求めない(無償性・無給性)4、よりよい社会を作る(創造性・開拓性・先駆性)だ。

 

 

 続けて相原教授が日本におけるスポーツボランティアの好例として挙げたのが、1985年に神戸で開催された第13回夏季ユニバーシアードだ。この大学生スポーツの世界大会においては大学生を中心とした8,300名、延べ42,000名のボランティアスタッフが大会運営をサポートした。この時の運営が滞りなく行われたため、今でも「神戸」という街の名前は、世界のスポーツ関係者に好感を持って受け止められているという。このようにボランティアスタッフの活躍は、大会運営を左右するということを強調し、来る大阪マラソンにおけるボランティア参加に対しての心構えを説いていた。

 

 その後、休憩を挟み、相原教授は東京五輪に対する見方やスタジアムの意義などを、実例とともに説明し、第1回目の講義を終えた。

 

 

 講義を受講していた近畿大学の学生は「単位を取るためでもありましたが、スポーツイベントにおけるボランティアについては、興味を持っていたために、この講義を受講しました。ボランティアの果たす役割を考えながら、この講義を受講し続けたいと思っています」と語っていた。また、別の近畿大学の学生は「中学校時代は野球部の主将を務めていたが、それ以降、責任を持った行動を取っていないと実感していたため、今度の大阪マラソンには責任感を持ってボランティアとして参加したいと思います」と決意を語ってくれた。

 

 この講義は12月1日の大阪マラソンを含め、残り4回。舞洲Voiceでは、今後もこの大阪市と大学が一体となった取り組みに注目していく。

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